■チンネ左稜線&八ッ峰6峰(北アルプス剱岳) |
レポート No.749 |
【8月 7日】 立山ケーブル駅(7:00)〜室堂バスターミナル(8:20)〜雷鳥沢(9:30)〜別山乗越(12:20)〜剱沢小屋(13:30) |
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チンネ左稜線登攀の日 いよいよ念願だった登攀日がやってきた。昨夜は2時過ぎにテントを打つ雨の音で目が覚めたが、比較的ぐっすりと休めた。4時過ぎにテントから出るとあたりは、ガスで乳白色の世界になっていた。天気に大きな崩れはないので、必ず晴れてくることを信じて準備を進めた。朝食は温かいコーヒーとパンで体を温めた。 チンネへのアプローチ 5:35 今日の行程はまず、長次郎谷の右俣雪渓を池ノ谷乗越まで登り、池ノ谷のガレ場を下り、三の窓へ出て、チンネ左稜線の取り付きまで、雪渓をトラバースしなければならない。休憩を入れて3時間を見積もっていた。 長次郎谷右股 朝食を済ませ出発の準備は整ったが、ガスが晴れてくれない。右股は池ノ谷乗り越しまで雪渓が繋がっているので心配ではなかったが、ガスで進む方向の見通しが立たない。昨日、シミュレーションしたルートを思い出し、微かに見える八ツ峰の岩壁を頼りに距離感を確認して雪渓を登っていった。すると正面にモレーンがうっすらと浮かび上がってきた。ルートは間違いないようだ。 モレーンまで進むとW大学男性2人組パーティーがルートを決めかねていた。(このパーティーとは頭迄一緒だった)少し先まで進んだが、雪渓が狭くなったので引き返してきたようだ。もう少し左の谷から入ってみます、といってガスの中に消えていった。ルートはまっすぐで間違いないようだが、念のために昨日撮影したデジカメの画像で確認してみた。やはりまっすぐでいいはずだ。モレーンからは傾斜が増してきた。雪が程よく固まっているのでアイゼンの爪がしっかり説面をとらえてくれた。スリップは滑落に繋がる。ピッケルとアイゼンだけが頼りだ。 池ノ谷乗越 6:45 途中のモレーンで小休止を入れたが、ほぼ予定通り池ノ谷乗越に到着した。まずは第一関門突破といったところだ。雪渓が繋がっていたのでよかったが、もし途中で何カ所も切れていると、昨日のように大幅なロスタイムが発生してしまう。 池ノ谷ガリー アプローチでの第二の核心は、この池ノ谷ガリーの下降だとおもう。大小の岩が積み木のように重なり、ひとつ崩れると岩雪崩が起きてしまいそうだ。慎重にルートを選んで下るが、多少の落石は起こしてしまう。ガスがなければどこまで下ればいいかわかるが、全く見通しがきかないので、下り続けていると不安になってくる。チンネの岩壁の標高差が約200mあるので、だいたいの見当はつくのだが。慎重に下って予定通りやく1時間で三ノ窓に到着した。水場の有無はわからないが、いいビバークサイトになっている。コルに3、4張、谷側の斜面にも数張のスペースがあった。 三ノ窓で休憩していると、モレーンで出合いルートをミスったW大学の学生がやってきた。先行しているパーティーがあるかどうか分からないが、このパーティーと前後して登ることになりそうさ。我々は3人パーティーなので、ペアの学生に先行を譲った。ガスで見通しは利かないが、どうやらコルから、雪渓が繋がっているようだ。岩壁に沿ってトラバースすればいい。 チンネ左稜線取付 雪渓に踏み込むとガスが晴れてきて、チンネ左稜線が浮かび上がってきた。基部まで雪渓が繋がっていて、シュルンドもそれほど口を開いていない模様だ。確か一昨年、雪渓崩壊で死亡事故が発生しているところだ。今年は雨が少なく融雪が進まなかったようで、しっかりと雪渓が残っていた。雪が多くても困るが、ないのも困る。 チンネ左稜線 チンネの中で最も長いラインがこの左稜線。チャレンジアルパインによるとサブタイトルは「三ノ窓雪渓、八ツ峰の景観を満喫するリッジ」となっている。レベル的には「4級下X3〜4時間」だ。13ピッチからなっていて、なんと言ってもメインは9ピッチ目の核心部(X)で、ハングを越え、フェースからリッジへ移るところ。すばらしい景観の中、露出感と高度感を感じながらの登攀は、心に刻まれることになった。 1ピッチ目は半分ほど雪に埋もれていたので、左から凹角を上がりバンドへ。W大学の離陸を待った。 2ピッチ目(W、40m) さてここからが実質的な登攀の開始になった。バンドの左端からフェースを直上となっているが、他にもピンがあるので、カンテにそって登ってみたが、どのラインも上のバンドに出て、そのまま登攀を継続し40mロープを延ばすが、先行パーティーが中間バンドでピッチを切ったので我々もここでバンドで切った。 2ピッチ目の中間バンドからもフェースが続き、バンドの右からも左からもラインがあり、次のバンド(2ピッチ目の終了点)でピッチを切った。 中間バンドも安定していて、少し高度が上がったことで、雪渓と三の窓がよく見渡せた。待ち時間を利用して景観を楽しみ撮影に興じた。 3ピッチ目(V、50m)フェース、バンド、ルンゼと続く長いピッチ。ここもバンドでピッチを切らないとロープが流れないだろう。フェースを登ってからバンドでピナクル下を右に回り込む。回り込んだところで核心部の9ピッチ目が見えてきて、登攀意欲を刺激された。
とやま 昨日も巡視にきたが今日も、富山県防災ヘリ「とやま」がやってきた。我々の登攀の様子を見にきたようだ。手を振ると救助要請と間違えるので、うさぎが「敬礼」をしたら、手を振って答えてくれた。その後、雪渓にそって三ノ窓まで上がって行って、窓の真ん中でホバリングしてくれるというパフォーマンスに、緊張した心が和んだ。 4ピッチ目(V+、20m)岩溝の上のフェースを登る。
5ピッチ目(@、40m)草付きのリッジで歩きになった。 6ピッチ目(U、40m)リッジ左のハイマツ混じりの易しいフェース。調子にのってロープを延ばし過ぎ、ロープが足りなくなってフェースの途中でピッチを切ることになった。うさぎを引き上げ、リッジの凹角までトラバースさせた。 7ピッチ目(V、40m)リッジ上の凹角に入ると、クレオパトラニードルと9ピッチ目の核心が目に飛び込んできた。実にすばらしい景観だ。
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2013-8-11Copyright (C) 2013 k.kanamaru. All Rights Reserved. home |