■北方稜線@剱岳(北ア) |
|
レポート No.828 |
〜北方稜線を歩き仙人温泉から水平道で下山〜 |
|
|
9月12日 自宅(19:30)〜立山(0:00) |
||
剱沢野営場〜剱岳9月14日 2時半に目を覚ますと、あちらこちらのテントに明かりがつき始め、朝食を準備するコッヘルの音が聞こえだした。コーンクリームとパンで簡単に食事を済ませ、テントをたたみ出発準備を進めた。雨に濡れたフライシートが重く感じられた。昨日から昼、夜、朝と食事をし、食料の重さは減っているはずだが、ザックを担ぐとずっしりと重く感じる。3時30分に出発の準備が整い、予定通り野営場を離れた。 剱岳を見ると光の列が一服剱へと伸びていた。出発準備が整った剱沢からのパーティも続々と出発している。難所「カニのたてばい」で渋滞しそうだ。本日の行程はコースタイムで11時間。もちろん渋滞は想定内だが、無駄な町時間は出来れば避けたいと思う。 剱への登頂者の大半は、山頂をピストンするサブザックを背負った人ばかり。テント装備で山頂を越えていく登山者は見かけなかった。ほとんど空身で登る人たちとペースが同じなので、登りが辛かった。山頂を目指す登山者とは違い我々は、山頂までの行程は北方稜線へのアプローチなので、出来るだけ体力を温存したいところだが、空身の登山者にペースが乱れた。 カニのたてばいの渋滞の列に落石が落ちてきた。こぶし大の落石が私の右手の平にあたってから、女性の膝にあたった。大きな怪我はなかったのが幸いだった。たてばいが終わると山頂はすぐそこだ。岩に降りた霜が凍結していてツルツル滑り歩きにくかった。 剱岳 渋滞を差し引くとほぼコースタイムで山頂に到着できた。山頂を踏むのはこれで5回目になった。どの山に登るときも、山頂を極めた後は、もう来ないかもしれないと思うことが多い。剱に関してはこれが5回目だが、それぞれ目的が違っているので、自分なりに意義がある。ご存じの様に剱岳の一般登頂ルートは、別山尾根と早月尾根で、この二つは登っている。後はバリエーションで、八ッ峰と源次郎尾根でそれぞれ1回山頂を踏んでいる。二度目の八ッ峰とチンネでは往復、長次郎谷を使っているので山頂は踏んでいなかった。今回は北方稜線がメインなので、山頂は通過地点になった。 北方稜線(剱岳〜池の谷乗越) 北方稜線は山頂から始まる。山頂には一般登山者にとって気になるプレートが岩に貼られている。有名なプレートで、「キケン通行止め」と書かれている。ここからがバリエーションルートだ。過去に2度の八ッ峰登攀で池の谷から2度ほどアプローチに使っていたが、下りに使うのは今回が始めてだ。 山頂を離れると、登山者の作り出す喧噪がなくなる。北方稜線へと踏み出す登山者はほとんどいないからだ。穏やかな天気で風の音もなく、靴が岩を踏む音が時折コトコトと聞こえるだけだ。前後を気にすることもなくじっくりと剱の稜線と対峙しながら歩ける。稜線付近まで残雪がある時季は、踏み跡が途切れたりするが、この季節のルートファインは容易で、北鎌尾根ほど気を遣わなくて済む。山頂から池の谷までの区間が北方稜線で一番おいしいところだと思う。 山頂から降りきったところが長次郎谷のコルで、ここから登り返しが難所のひとつだろう。左の斜面からも行けそうだが、前回懸垂で降りた所を登ってみた。懸垂ポイントを支点にして後続を確保した。北方稜線は登攀具をほとんど必要としないルートだが、不測の事態に対応するためにいつも、最低限の登攀具は装備している。今回は30mロープ1本、ハーケン3枚、下降器、カラビナ、スリングなど最低限のギアは装備してる。というよりも普段から垂直のルートばかりやっているので、ハーネスに最低限のギアを持っていないと不安になるからだ。 長次郎の頭 核心を登り長次郎雪渓側に出るとルートは安定する。長次郎の頭を巻くかたちになる。実は昨年ここで事故が起こっている。山岳カメラマンの新井和也さんが落石にあい遭難死している。事故が起こったのは、我々が昨年チンネをやる2週間前だった。山と渓谷の雑誌関係で一度、鈴鹿の情報を提供をしたことがあるので、以前から知っているライターさんだった。それだけに、長次郎谷の頭に来ると事故のことが思い出された。今回の山行から帰宅すると山と渓谷の2014年10月号が届いていた。巻末の郷山めぐりの原稿を書いたので、自分の原稿をチェックしていると、なにの因果かわからないが、「夜間行動の危険性」〜山岳カメラマン新井和也氏の事故から〜のタイトルで4ページの記事が書かれていた。ルート上にまとまったら落石のある所が1カ所あった。現場はここだとは断定できないが、残雪があるときルートが寸断されるので危険箇所の通過を強いられることがある。雪解け直後は岩が動いているので落石のリスクが高くなる事は知られているが、新井氏は、点と線と時間が交わってしまったという不運と遭遇してしまった。 ルートは終始、長次郎谷側で地形の弱点をついてうまくトレースされている。核心は岩壁のバンドのトラバースで、確保するほどではないが、ピトンからロープが下がり、核心部の通過に一役買っている。確か一昨年取り替えた、7mmロープスリングが健在だった。 バンドに沿ってトラバースし、稜線を西側に乗り越すと野営適地がありその先が池の谷の頭だ。展望の良いところで、八ツ峰が一望でき、頭付近で懸垂を待つクライマーが見られた。 池の谷の頭からは岩壁のクライムダウンになる。ホールド、スタンスとも豊富なので行き詰まることはないが、リスク軽減のために残置されたフィックスを使い、フリクションノットで下った。池の谷乗越で、八ッ峰の登攀を終えた数名のクライマーと行き交った。 |
||
2014-9-16 Copyright (C) 2014 k.kanamaru. All Rights Reserved. home |