2022年8月9日〜8月11日 No.1457

北アルプス奥穂高岳南陵の登攀3 トリコニー

霧が晴れない

下部岩壁を登りハイマツ帯の尾根を進む。時折ガスは腫れるが、どうも天候回復の兆しが見えない。それどころか、小雨がぱらつき始めた。岩の表面はよく滑るが、スタンス、ホールドがあるので登攀はできる。


ガスで見通しが効かないが、尾根ルートなのでルートを見失うことはないだろう。かすかにモノリスが見えてきた。この辺りから高度感のある登攀が楽しめるところだが、残念ながら足下の岩しかみえない。心のテンション下がり気味。

モノリス

モノリスは一枚岩という意味がだそうだ。岩の間のチムニーに入る。

ウェストンと嘉門次

10:30クーロワールの右の岩壁にあるオーバーハングの下に達した。ここで休憩してこの日二度目の朝食をとり、余分の荷物はぜんぶ岩庇の陰に置いた。「南陵の取り付きでしょうか」再び花崗岩のスラブを登ると、1時間ほどで最初の雪渓にさしかかった。標高は8500フィート(2600m)、私の傾斜計によると勾配は40度で、日本国内で経験した山や峠の中で最高の険しさだった。「標高的に見ると下部岩壁手前のルンゼに雪渓があったということかな」雪の上を2,300フィート(90m)進むと、再び険しい岩場になった。「ここで尾根の岩稜にとりついたと思われる」


ここから頂上までが今度の探検で一番面白い部分だ。岩はこれまで経験したことがない硬さと険しさで。これを登るために全精力を振り絞ったが、それだけに気分は高揚した。12:45険しい鎌尾根の上に登り立ったが、ここから上がいみじくも「直立する稲穂の山」と名付けられた巨大な花崗岩の岩塔群である。「おそらくトリコニー1,2峰だと思われる」そろそろ13:30というころ、山頂のピナクルに達した。「トリコニーから山頂まで45分と云うことになるが、我々は2時間かかっている」
日本アルプスの登山と探検(ウェストン著)岩波書店より引用
チムニーを登る

トリコニー1峰

チムニーを出るとトリコニーⅠ峰。トリコニーは昔の登山靴のそこに打つ滑りどめの鋲のこと。フェイスのフリクションがあると楽に登れるが、岩が濡れフリクションが全くない。乏しいホールドに立つのが怖い。ロープを出しカムをセットしエイドで突破。


この辺り、ロケーションが素晴らしいところだが、ガスで何も見えない。
核心部
少しガスが晴れ眼下に扇沢雪渓が見える
ちょっとした簡単なクライムダウンも懸垂で降りた

2峰

ここはナイフリッジの通過が醍醐味だが、ご覧のとおり、どこを登っているのかわからない状態。知らぬ間に通過している。もちろん高度感は得られない。
ナイフリッジ

懸垂

懸垂ポイントは躊躇なくロープを出した。前回はクライムダウンしたところ。


懸垂ポイント クライムダウンもできるが岩がもろいので要注意