2021年12月22日23日 No.1406

南アルプス冬の農鳥岳に登る Page2

第二日目

2:00に起き、水作り、食事、出発準備に1時間半を要した。静かな朝だった。樹林なので星空はよく見えないが月明かりがあったので、予報通り天気は良さそうだ。1リットルのポットにお湯をつめ、行動食はカロリーメイトとビスケットを準備した。水気のあるものは凍りついてしまう。ペットボトルが凍り付くと、役立たずのただの重りになってしまう。

山頂アタック

3:35 この日の行程は、山頂を踏んでからビバーク地に戻り、テントを撤収後下山するという長い行程だ。積雪状況により時間は読めないが、なんとか日没までに登山口まで戻りたい。標高2500m付近までは順調に高度を上げることができた。先頭は一番若いNくん。大門沢小屋から下降点まではコースタイムで3:35だが、積雪期はとてもそのタイムでは登れない。
甲府の街の明かり 夜明け

順調に高度を上げるが

先週の寒波で積雪したようで、2500m付近から積雪が50センチ以上になってきた。トレースはルートがわかる程度で、体重をかけた足が沈み込むようになってきた。目印テープはある。ここで先頭はスノーシュー、後続はワカンを装着した。振り返ると、甲府の街の夜景と白み始めた東の空に富士山のシルエットが浮かび上がった。日の出(6:50)はドラマチックに富士山の肩だった。
甲府と富士山
富士山から日の出 6:50
ダケカンバ帯で苦戦

ラッセル地獄

気がつくとラッセル地獄にはまっていた。スノーシューもワカンも役に立たない。降雪直後なので簡単に踏み抜けてしまう。少しでも高度を上げようともがく。このままだだと山頂が踏めない可能性もあった。

標高2600mで苦戦

当然、予測はしていたが、いやな予感は見事的中した。標高2500mから2700mまであげるのに2時間を要した。当然、パワーも浪費している。ダケカンバ帯が一番辛かった。激闘ですぐに息が上がってくる。肩で呼吸して息を整える。日の出とともに山腹の雪面が赤く染まりだした。美しいが、じっくり観賞するゆとりはない。
富士山からの日の出
朝日に染まる山腹の雪面
ハイマツ帯の急斜面

ハイマツ帯でラッセル解放

なんとか2時間の激闘でハイマツ帯に入った。正規ルートからは外れているが、トレースはないのでどこも同じ。夏はハイマツの藪は難儀させられるが、この日は、ハイマツをつかんで登ることができた。稜線が近づくと雪は強風で飛ばされていた以外と積雪は少ない。もちろん吹きだまりに入ると足を取られる。稜線の2830mに8:20に到着した。山頂までの往復に2時間30分はかかる計算なので、順調にいけば11時には下降開始できそうだ。さてこれから、稜線の絶景を楽しむことにしよう。
稜線は見えてきたがまだまだだ
傾斜があるので滑り出すと止まらない
日差しがあるのはありがたかった
サングラスを風で飛ばされ捜索中、サングラスがないと雪目になってしまう
稜線には窪地がある

大門沢下降点付近

8:20 稜線の気温はマイナス14度、風は風霜15m以上あるが、雲一つない快晴に恵まれた。日差しがありがたかった。しかし防寒はしていても、耳や鼻など露出部分はちぎれそうに冷たい。
左から順位 広河内岳2895m 荒川岳3141m 塩見岳3047m
稜線は雪が風で飛ばされて岩が出ていた
下降点からの登り
荒川岳3140m

稜線

稜線は風裏に入るところはいいが、風の抜けるところは体を揺すられ、耐風姿勢になることもあった。一気に体温も奪われる。


低温と風は受け入れるしかなく辛いが、それ以上に快晴による絶景が素晴らしかった。東に富士山、南に荒川三山と塩見岳の銀嶺が輝いていた。さて、農鳥岳さ山頂まであと標高差200m残っている。時間的にゆとりがあるわけではない。
塩見岳
遠州灘でしょうか、海が見えます