2020年9月14日〜16日 No.1300

北鎌尾根(北アルプス)  Page2

二日目

この日の行程は稜線のビバークだが、悪くても独標は越えたい。果たしてどこまでやれるか、前回の北鎌尾根から8年が経ち、加齢による衰えはなかなか計算が出来ない。かなり厳しい行程であることは確かで、初日に楽をした分、二日目と三日目が厳しくなった。ヤマレコのGPS標高差を見ると、累積標高(上り): 2106m 累積標高(下り): 1048mだった。 まずはロッジから大曲まで1時間強で進んだ。朝は気温が低く歩きやすいが、長丁場になるので無理は禁物だ。
槍沢ロッジ
馬場平野営場
槍沢大曲り

GPS標高とSRTM標高

ところでヤマレコの標高データだが、GPS標高とSRTM標高がある。グラフを見ると今回の二日目は、累積標高(上り)で比較するとGPS標高が2106mでSRTM標高が1697mと大きく異なっている。どちらを見ればいいのかが問題となる。それぞれの内容を調べて見ると、GPS標高は端末(今回はiphone)が計測したデータで、SRTM標高はShuttle Radar Topography Missionだそうで、衛星が計測したデータから算出しているそうだ。ヤマレコは国土地理院の10mメッシュデータを採用しているとここと。だからどうだというと、ご存じのようにGPS標高は谷に入ると電波を受信できずにデータが飛んでしまう傾向にある。今回も北鎌沢のデータをみるとわかるが、下ってもいないところで下がっている。

これが加算されるので実際よりも大きな値になると思う。一方、SRTM標高はそんなことはないが、10mメッシュなので、小さな上り下りは加算されないので、実際よりも少し値が小さくなると思う。SRTM標高のグラフを見ると、最低点が二つあって、出発時点が槍沢ロッジ、次の最低点が北鎌沢出合、次の小さな山がJ左俣の水汲みだ。7キロ地点がコルで、それから独標までは小さな上下があったと思うが、GPSグラフには出ているが、SRTMグラフにはあまり出ていない。コルまではSRTMデータを使い、コルからはGPSデータを使えばいいと思うが面倒なので、SRTM標高のデータに少しプラスして考えれば実際の値に近くなると思う。なので、今回はアバウトだが、上りが1750m、下りが750mくらいだろうか。いずれにしろ、フル装備を担いでこの標高差は、還暦を5年過ぎた体には厳しかった。
GPS標高
SRTM標高
南岳方面

日本山登山大系「槍ヶ岳・穂高岳」には積雪期のルートして紹介されている。華々しい歴史を持つ古典的ルートでありながら、今なお登山の総合力を要求される価値ある一流の尾根である、と序段に書かれている。この項に掲載された図を参考に下図を書いた。
ルート概略図

装備

このルートはヘルメットがあれば踏破できるルートだ。なので、単独者も多い。縦走の延長の人もいれば、クライマーもいる。縦走の延長の人は、ギアを持っていても、なるべく使わないように歩くし、クライマーは普段からギアを使い慣れているので、ギアを積極的に使う。当然、ギアを使った方が安全だが時間がかかる。そこは状況判断だろう。

我々はクライミングもよくやるので、普通にギアを持って入った。使わなくても持って行く習性がある。今回も最低限の装備、ロープ40m、アルパインヌンチャク5、スリング類5、カム4等を持参した。当然、荷物は増える。登山は自己責任でどう歩こうが自由だが、事故があってはならない。

槍沢大曲り〜水俣乗越

大曲から水俣乗越までのコースタイムは1時間30分。登り始めると徐々に明るくなり南岳のモルゲンロートが拝めた。稜線が見えるようになると、いよいよ高山の領域に入った感がある。予定通り1時間30分で乗越に到着した。標高は約2500m、これからの下りで上った標高差の貯金をすべて吐き出す。
水俣乗越
北穂小屋
ヒョウタンボク

天上沢

北鎌沢出合いの標高が約1850mなので、約650mの下降だ。しかもここからはバリエーションルートなので道は悪く、下りでも体力を消耗する。樹林帯の急降下はそれほど時間はかからないが、涸れ沢になってからが遠い。天上沢を下るにつれ徐々に、槍と北鎌尾根、独標の全容がつかめるようになってくる。何度も振り返りながらまだかまだかを出合を目指した。
天井沢から見上げる槍と北鎌尾根
北鎌沢出合

北鎌沢出合

ほぼ予定通り乗越から2時間で出合に到着した。前回は雨の降る中、ヘッデンの明かりを頼りにここまで来てテントを這ったことを思い出した。雨が降り川のようになっていたが、今回は完全に涸れ沢になっていた。それはいいが、コルに上がる前に給水する必要がある。馬場平で1.5リットル持ってきたが、それではまったくたりない。ルートの右俣でも途中で給水できそうだが、大事を取って左俣で給水した。前回給水した分岐付近は完全に涸れていて、心配したが、耳を澄ませると水流の音が聞こえ、100mほど登ったところで2.5ットル給水した。全部で3.5リットル。明日の槍の肩まで給水できないので、これでやりくりしなければいけない。
給水
北鎌沢右俣

北鎌沢右俣

右俣は登りやすい谷だが、急傾斜で体力を消耗する。途中で水流があった。結果としては、ここでも給水できた。左俣の水汲みに20分を使っていた。このルートの難所は上部の草付き斜面に入ってからだった。前回は迷わなかったが、今回は踏み跡がはっきりとせずに、行きつ戻りつ無駄な時間と体力を浪費した。一番右のルンゼが正しいが、どこかで見落としたのが敗因だ。この区間で想定外の1時間弱のロスタイムとなった。

北鎌のコル

しかし、北鎌のコルが12時30分だったので、予定よりも30分遅れですんだ。このペースで進めば、P13まで行けそうだと思ったが浅はかだった。コルで休憩をたくさん入れたが、体力の消耗により疲労が蓄積し足が上がらなくなっていた。あまり食べていなかったので、シャリバテ状態になっていたと思うし、水が3リットル増えた分、足腰に疲労が来たようだ。ペースがかなり落ちて、独標も怪しくなってきた。
右俣の登り
草付き斜面が見えてきた、しかしここが遠かった。
コルから俯瞰
シラタマノキ
ミヤマコゴメグサ
稜線に上がると展望が開けた