■錫杖岳前衛峰左方カンテ |
レポート No.757 |
28日 鈴鹿(14:20)〜槍見温泉ひがくの湯(18:30) |
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プロローグ 錫杖岳前衛峰はクライマーにとってあこがれの岩壁で、とりわけ「左方カンテ」と「注文の多い料理店」は一度は登ってみたい人気ルートだ。もともとアルパインのルートで残置が多く、初級向けであったようだが近年、フリー化の波に押されボルトが整理されたようで、ナチュラルプロテクションを駆使するルートになっている。ネットの情報もあるが、レポーターのクライミング歴によって見方が違うので、参考程度にしかならなかった。そこで頼りになるのは、昨年登っているタクさんのレポートだ。山行に備えてアドバイスを依頼すると、ルート情報とともに、実に的確なアドバイスが帰ってきた。鬼に金棒、勇気百倍、前日にゆっくりと湯につかる心のゆとりも出てきた。 アプローチ 昨夜は「ひがくの湯」の素泊まりを利用した。掛け流しの温泉が二日間利用でき、食料の持ち込みも可で、料金は3150円とリーズナブルだ。登山者の利用が大半らしく、早朝5時出発にも対応してもらった。 出発 5:20 予定通り4時半に起床し5時に「ひがくの湯」を出発して、蒲田トンネルの出口にある無料駐車場に車で移動した。空きスペースは一台分のみで幸運だった。5時過ぎの時点では登攀パーティは1組で混雑の不安はなさそうだ。準備を済ませてヘッデンを点灯し駐車場を出発した。橋を渡り対岸の車道を歩いているとうさぎが、いつもよりザックが軽いというので、下ろして忘れ物がないか確認した。ガチャ類も入っている、食料も入っている、カッパも入っている。「ハーネスとフラットシューズを忘れると登れないから」、と念を押したのだが。 クリヤ谷 ヘッドランプがいらなくなるころにクリヤ谷を徒渉し、さらに高度を上げていくと樹間から前衛峰が見え隠れしだした。いよいよ近づいてきた。昨年は積雪のため、錫杖沢出合で断念したことが昨日のことのように思い出された。朝日を受け青空を背景にくっきりと浮かび上がった岩壁が登高意欲をそそっている。 錫杖沢出合に降りるとテントがひと張りあった。きっと昨日からのパーティーだろう。今日はどこをやるのだろうか?涸れ沢の石に腰掛け一息入れる。するとうさぎが、「ハーネスがない」、なんということだ。出発の時に注意したのに、ここまで来てしまうととりに帰っている時間的なゆとりはない。ほぼ垂直の懸垂が50m3本あるし、確保器も忘れていると危険だ。幸いルベルソはもっていたようだが、ハーネスがないと危険なので、ここから先に帰って温泉で、我々が帰るのをゆっくり待つか?と提案すると、いやだ。仕方がないので、スリングで簡易ハーネスをつくり急場を凌ぐことにした。
さてこの先はバリエーションだ。錫杖沢の左岸に踏み跡があるそうなので探すとすぐに見つかった。赤の目印テープもある。踏み跡に導かれてぐいぐいと高度を上げていく。途中本流と別れ急斜面を登っていくと灌木の間から岩壁が見えてきた。とにかく踏み跡をたどって岩壁まで登っていた。 岩壁に突き当たり左に少し進むと北沢に出てそのまま登ると、2パーティーが岩壁に取り付いていた。北沢側に回り込んできてしまったので、これは「注文の多い料理店」らしい。登り過ぎたみたいだ。先ほどの分岐まで少し戻り右に進むと、何度も写真で見てきた1ピッチ目のルンゼの取り付きに到着した。ここが左方カンテの取り付きに間違いないようだ。 左方カンテ1ピッチ目 40m V+(隊長リード) 待ち時間も想定内だったが、運良くこの日は左方カンテは我々だけのようで、じっくりと登攀に専念できそうだ。サブザックに必要な物だけを入れて登攀の準備をした。カムはsskさんのと合わせると、中間サイズのカムは2セットある。ナッツは持っていない。ハーケンは7枚。すべてがNPなので、これだけで足りるか不安だったが、初見のルートなのでとにかく行ってみないとわからない。カムがキャメの#5を除くフルセットなので、ギア類だけでかなり重くなってしまった。ヌンチャクを減らし、カラビナとスリングを多めに持ってきた。しかしその前にやることがある、うさぎの簡易ハーネスの作成だ。スリング二つでレグとベルトを造り、ギアラック用に持ってきたチェストハーネスを装着して完璧に仕上がった。ビレイの操作を間違えない限り大丈夫だろう。 1、2、3ピッチを私が、4,5、6ピッチをsskさんがリードすることにした。 1ピッチ目はルンゼルートで、グレードがV+と簡単なピッチだ。立木とカムでランニングを取りながら、ロープの流れに注意しながら登っていくと左の岩壁にしっかりとしたハンガーが設置されていた。 左方カンテ2ピッチ目 40m W(隊長リード) 2ピッチ目も引き続きルンゼというか凹角を登っていく。灌木もなくなり漆器里とした岩壁になってきた。傾斜も徐々に増してきて、クライミングらしくなってきた。クラックも多いので、カムでランニングがとりやすい。クラックの奧に入り込んで抜けなくなったカムが残置されていたのが印象的だった。しっかりと使わせてもらったが。 ハンガーのあるピナクルテラスまでロープを伸ばしてピッチを切った。ピナクルテラスはルンゼを抜けたところにあるので、一気に展望が開けた。見上げると3ピッチ目のフェースが迫ってきていた。
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2013-9-29Copyright (C) 2013 k.kanamaru. All Rights Reserved. home |