2022年9月12日13日 No.1460

大杉渓谷の滝巡り(三重県)

【行程・登山者】


【9月12日】鈴鹿5:30〜大杉谷登山口駐車場7:40〜大日嵓7:55〜能谷吊橋8:40〜地獄谷吊橋〜京良谷出合9:20〜10:05千尋滝10:30〜11:15シシ淵11:45〜ニコニコ滝〜平等吊橋12:15〜13:15桃の木小屋13:35〜14:00七つ釜滝14:25〜小滝見物〜桃の木小屋15:00
【9月13日】桃の木小屋6:40〜平等嵓7:15〜ニコニコ滝7:35〜シシ淵7:50〜千尋滝8:35〜大杉谷登山口駐車場10:30
【撮影機材】 GoPro9 OM SYSTEM OM-1 レンズ M.ZUIKO ED12-100mm 8-25mm

YouTube https://youtu.be/wVIC8vNcETM


【概要】

次年度に使う緑の季節の写真撮影に大杉谷に入った。大台ヶ原から下ることも考えたが、アプローチが面倒なので大杉谷から七ツ釜滝まで往復した。標高が桃の木小屋付近で約500mと低く、カシなどの常緑広葉樹が多く、カエデなどの落葉樹はそれほど多くはない。なので夏の緑の季節の渓谷が美しい。しかし、標高が低いので気温が高く、雨が降るとヤマヒルが多いのが難点だ。大杉渓谷はこれまでに何度も入っているが、歩きやすい5月と10月が多かった。今回のミッションは、8月の滝なので、歩きやすさよりも緑の風景が優先された。

アプローチなど

今回はルート写真を切り捨て、滝と渓谷に集中した。大台ヶ原からフルコースで歩くとなると、アプローチにかなり手間がかかる。それにこの季節は暑くて歩きにくい。車でアプローチし、七ツ釜滝まで往復することにした。若いときは日帰りも苦にならなかったが、高齢者の部類に入っているので無理はしないことにしている。
登山口の宮川第三発電所が改修工事に入っているので、工事車両がたくさん入っています。道幅の狭い林道なので離合などに注意してください。


大杉谷のルートは、吉野熊野国立公園にあり、ルートはよく整備されている。日本三大峡谷の一つとあって、谷が深く滝が多く、自然の造形は素晴らしい。岩壁道や滝の高巻きなどがあり、中間地点の桃の木小屋までの標高差は300mほどだが、アップダウンがあるので、累積標高は、七つ釜滝まで往復すると1000mを越える。岩場が多く、雨に濡れると滑りやすいので転落事故が跡を絶たない。岩稜歩きの経験がないとお勧めできない。登山道の状況は大杉谷登山センターのページで確認してください。
分県登山ガイド「三重県の山」(山と溪谷社)では、一番最初に大杉谷から日出ケ岳を紹介しています。県内の山の中ではやはり、一線を画しています。全国的に見ても、これほどスケールの大きな渓谷と山を歩くルートはそれほどありません。

日出ケ岳は日本百名山

深田久弥の日本百名山を見ると、やはり松浦武四郎のことに触れられていた。ただし大杉谷については記述がない。というのは奈良県側から登っているからだ。登った年代はわからないが、山頂で近鉄山の家に泊まっている。


松浦武四郎と大杉谷

武四郎は明治19年(1886)5月10日に大杉谷に入っている。
未明に支度して足元のほのくらきに出立。川岸斗大岩の上を飛越、刎越(はねこえ)、十七八丁(2キロくらい)にして、千尋滝、かもしけ谷、此辺り南岸に上りまた下る。とうだゐ、ます泊等過て行にますます難所なり。是も話の種と辛うじて十時過ぎまで行。平等石またしばし山はますます両方せばなり、さがしく相成候て、谷筋は大岩河原、七つ釜<川底>。過て、左本川を西谷と云う。是より上は登り難し、・・・・
登山口を入るとすぐに岩壁道から始まる
エメラルドグリーンの清流が続く
吊橋も数えていくと面白い
大日嵓が見える河原
苔むした岩
川に降りられるポイント

千尋滝

約2時間で千尋滝に到着。展望所の東屋があるので滝見をかねて休憩ができる。水量は期待通りで、薄曇りの照明に撮影には向いていた。末広がりの滝なのでこの名があるようだ。谷間での落差がかなりあり、見えているのは上段部分。
「近畿の山名と谷」から引用
千尋瀧はこの辺りで最長の瀑布で、千尋谷の豊富な水量を二百mの落差で本流に落ち込み、登山道からは上部の三分の一位しか遠望されない。この滝音を耳にする頃から谷は我に返って両岸を削るがごとくに対峙した峡谷となる。
大滝 

シシ淵

実は昨年、親戚のものがここで滑落し亡くなっている。初盆なので拝んできてくださいと云うミッションがあった。この辺りも岩が濡れていてよく滑るので事故が後を絶たない。今年も8月に滑落死亡事故が発生している。いやな話になったが、ここもルート中の名所で、私の父親がここで写真を撮っていた。数年前になくなり遺品整理をしていたら出てきた。槍や燕などの写真も出てきて、山に登っていたとは聞いていなかったのに、やはり親子だわ。子も同じことをやっていると思うと、おかしくなってきた。
シシ淵
左側が私の親父


家に古い写真が残っている。おそらく、昭和二十年代だから約70年前の写真だ。これ以外に大杉谷の写真は見当たらないが、服装などから推測し、桃の木小屋が昭和15年開業していることを考えると、登山道はある程度整備され、桃の木小屋で宿泊したことが想像できる。足下を見ると地下足袋だ。
シシ淵とニコニコ滝

ニコニコ滝

近畿山と谷から引用
ニコニコ瀧は嘉茂助谷の御料林道を下ると六段から成って居ることが良く判る。上部から数えて一、二、三段の瀧は五米から十米あまり、それぞれ大きな壺を持ち、第四は三十個目、第五が最ももの凄い。瀧の少し上手に高さ百五十米幅五百米もあろう屏風岩が三曲になって屹立する。見上げると威圧に後ろへ倒れそうな気のするほど素晴らしいものである。この辺り渓幅約三十米に狭められ激流。またこの岩の上手に続いて「奥のシシ淵」がある。

平等嵓

シシ淵からは左岸を大きく巻き上がる。深い谷の岩壁道で高度感がある。落ちたらアウトだ。展望所からニコニコ滝が間近に見える。20分ほど進むと平等嵓だ。2012年に再建された吊橋から大岩壁と深く険しい谷が見える。
「瀧の少し上手に高さ百五十米幅五百米もあろう屏風岩が三曲になって屹立する」とあるが、これは、前後の文章から判断すると現在の「平等嵓」と思われる。なぜ「平等」というか、高さが同じという意味らしい。
ニコニコ滝
平等嵓