2022年2月1日2日 No.1413

大峰山地 冬の弥山に登る Page1

【行程・登山者】

【2月1日】天川村役場604m8:50〜川合登山口9:05〜林道出合11:20〜栃尾分岐12:30〜天女の舞13:00〜金引尾根分岐13:30〜鍋の耳14:15〜高崎横手14:50〜15:15狼平避難小屋15:40〜大黒岩16:55〜弥山小屋17:30
11.5km +1540m -265m 8h50m
【2月1日】弥山8:40〜大黒岩9:20〜10:50狼平避難小屋11:20〜高崎横手11:45〜ナベの耳12:15〜金引尾根分岐13:00〜金引橋14:00〜熊渡14:35〜天川村役場15:35 13km +250m -1530m
【撮影機材】OLYMPUS EM5mark3 M.ZUIKO Lumix12-60mm  GoPro9
YouTube
https://youtu.be/ZdLHvgD24PA

【概要】


今週は南アルプス聖岳と大峰山系の弥山を候補に上げていた。いずれもテント泊1泊2日の行程だ。日本海を低気圧が通うか予報が出ていたので、少しでも高度の低い大峰に登ることにした。こんなときは計画しなければいいのだが。弥山は大峰山の主峰、八経ヶ岳の北隣りで標高が1895m。亜高山域の山だが、冬型の気圧配置になりそうなので、風速20m、気温はマイナス10度予報が出ていた。気象条件は少し厳しいが、大きな崩れはなさそうなので登ることにした。初日は青空が見えたが二日目はガス気味で展望はなかった。冬季はやはり、登りごたえのある山だった。

天川村川合

オオヤマレンゲの花が咲く7月に何度も登っている山域だが、冬季登山は初めてで、冬季の場合は天川村が登山口になる。少しでも時間の短縮が見込める、熊渡から金引尾根で登る事もできるが、登山口の駐車に難がある。この2日で4人の登山者を確認できたがいずれも熊渡からだった。日帰りで往復するなら金引尾根を使った方がいいだろう。
役場の駐車場
上りに使った一般的なルート 11.5km +1540m -265m 8h50m

弥山・八経ヶ岳

紀伊半島の日本百名山は2山あり、台高山地の大台ケ原山1695mと大峰山の大峰山(八経ヶ岳1915m)。いずれも亜高山帯の山で、ウラジロモミ、トウヒの針葉樹林の森が広がる。南アルプスのシラビソ樹林を歩いているような雰囲気だ。深田久弥は日本百名山で「大峰山は我が国で最も古い歴史を待った山である。この山についての古記録は、枚挙すればいとまがない。・・・・」と書き始めている。近年では世界遺産に選定され「大峰奥駈道」として脚光を浴びた。ご存知のように開山(655年)は「役の小角(えんのおずぬ)」と伝えられる。それ以後、霊山として信仰され、天皇、皇族、公卿などの参詣が行われたようだ。現在の天皇は登山がご趣味のようで、皇太子(浩宮)のころの1990年に、この山に登られている。どのルートで登られたのだろうか。記録を見ると山上ケ岳から弥山まで縦走し天川川合に降りたようだ。とするとかなりに健脚だ。

弥山

深田久弥は洞川から山上ヶ岳に登り弥山まで縦走している。皇太子さんと同じルートというより、皇太子さんは百名山を読んでのこと。山のアプリで記録を見るとやはり、この縦走路はよく歩かれている。稜線は亜高山帯の針葉樹林で展望はあまり良くないが、心で歴史を感じながら歩く登山もなかなか興味深い。弥山・八経ヶ岳はこれまでに何度も登っているが、厳冬期に登るのは初めてで、冬の山の景観を体で感じたかったというのが本音かな。
さて今回のルードだが、掲載したルート図通り天川役場から出発した。無積雪期は行者還りトンネルから最短dね登れるが冬季は、国道309号線が冬季閉鎖になるので弥山登山の敷居が高くなる。しかし少し頑張れば日帰り登山もできる。
役場の駐車場
川合道登山口

川合道

役場から道標に従い登山口に入る。積雪があり凍結していたが、行けるところまでノーアイゼンで行くことにした。荷物は厳冬期登山テント泊装備だ。避難小屋泊とはいえでも、厳冬期登山の場合、積雪などによる行動制限は想定内で、避難小屋までたどり着けない場合はどこでも野営できる装備は常の持って置くべきだろう。


登山口の標高が604mで弥山が1875mなので引き算すると標高差は1271mだが、実際にはこのルート、尾根の小ピークを何度も乗り越すので、標高が加算され、ヤマレコの記録では+1570mくらいになった。アルプスなどの高山の場合、無積雪期ならいたって標準的だが、これが積雪期になると、装備は重くなり、ラッセルになるとかなり厳しくなる。今回は狼平から弥山までが厳しくなった。
樹林の登りが
林道出合

林道出合

樹林帯を黙々と約2時間登って林道出合。標高は1200m。明るく展望が開けるので気分も開放的になる。稜線の北面が植林で南側は落葉樹林。葉が出てないんどえわからないが、カエデ、リョウブ、ミズナラが確認でき、ブナがちらほら見られる。植生が変わると気持ちも変わる。積雪は50センチくらいでしょうか。よく踏まれていて歩きやすいが凍結しているので、植林の登りからアイゼンを装着した。

栃尾辻避難小屋

栃尾辻までは緩やかな稜線の登りで、歩いても歩いてもなかなか高度が上がらない。1時間以上歩いて1200mから1360m。ここで天川温泉からのルートが合流するようだが、崩壊のために通行止めだそうだ。ここからが登りで、「オオビヌキ坂」と呼ぶようだが、語源が知りたくなる命名だ。この先にP1518があり、登山道はこのピークを南側から巻くようだが、トレースがなかったのでP1518を踏んだ。この巻道、「フトンド横手」というようだ。これも語源が知りたくなった。登って下る無償のアルバイトがもったいなく感じた。
栃尾辻
中は土間だが、天候が荒れた時はありがたく感じるだろう

天女の舞

栃尾辻から少し登ると「天女の舞」という北側に展望が開けたところだ。これもいわを知りたいが、歴史の古い山域だけに、俗っぽさを感じない。旅人がここから天女が舞うのを見たところだろうと解釈した。ブナが多く雰囲気の良い森だった。


P1581を下ると金引尾根分岐、この先ナメリ坂でナベの耳というところだが知らずに通過した。この区間1時間ほどの行程だが、1500m台の上り下りでなかなか高度が上がらない。高度ばかり気にしていると徒労感が否めない。頂仙岳1717.7mを東から巻いて高崎横手出合。そのまま進むと明星ケ岳から紀伊半島の最高峰八経ヶ岳に至る。トレースはしっかりとついていた。できれば明日、見線から集会してここを下りたいがどうなるか。今回の登路は狼平避難小屋経由だ。
山上ヶ岳 稲村ヶ岳
ブナ、ウラジロモミなどが混在
高崎横手出合

狼平避難小屋

当初、積雪で思うように進めない時はこの避難小屋泊を考えていたが、時刻は15時過ぎだったので弥山まで行くことにした。狼平避難小屋は板張り二階のきれいな明るい小屋だった。谷の水が汲めるので宿泊敵地だ。ここで2リットル水を給水した。
ニホンオオカミの終焉の地は東吉野村鷲家口で、1905年の話。漁師によって捕獲され運び込まれたオスのオオカミをアメリカ人のアンダーソンが買取り標本にし、現在、大英博物館にあるようだ。ということで紀伊半島には100年ほど前まではオオカミがいたということ。このことと狼平がつながるのかわからない。

小屋〜弥山

さてこの区間だが、無積雪期のコースタイムは1時間となっている。標高差は約300m弱で、順調にここまで来たので、ここからもそれなりに登れるだろうと甘く見ていた。ところが小屋から登り始めると急に積雪が増しトレースが曖昧になってきた。スマホのGPSでルートを確認しながら登るが、鹿の防護柵がいくつもあって、出入り口のドアは雪に埋もれ動かない。ゴミで止めてあるところを見つけ3度ほど通過した。1700mをすぎるとトレースが雪に埋もれなくなった。ルートは踏まれているが少しでも外れると足を取られてしまう。今日は3人入っているが、おそらく明星ケ岳経由らしい。日没が迫りあたりが薄暗くなってきた。ガスで見通しが利かないが、小屋から約2時間で見線に到着した。やれやれ。
狼平避難小屋
弥山に到着 17:30

弥山冬季小屋

テント装備なのでどこにでも野営できるが、やはり冬季小屋はありがたい。立派な大きな小屋で、毛布が置かれていた。気温は外と同じでマイナス10度まで下がったが、居心地の良い小屋だった。使用料は一人3000円で自己申告でお金を入れるシステム。厳冬期のテント泊だと、テント設営、水作り、食事準備、食事、寝袋に入るなどで時間がかかるが、小屋だと広い空間があるのでこれら一連のことがスムーズにできる。毛布の上にエアマットを引いて寝たので暖かかった。


気象予報は日本海を低気圧が通過するようなので少し吹雪いてきた。外はガスでホワイトアウトし、何も見えない。夜景、星空撮影は明日の朝に期待したいが、果たして回復してくれるか。
ウインナーボイル
カレーライス
ガス缶はすぐに凍りつく