１ピッチ目�V　易しいルンゼだがプロテクションなし、カムも使えそうにない
２ピッチ目5.10a、30m　スラブ状フェイス　このルートの厳しさを思い知る
３ピッチ目5.10a、50m　スラブ状フェイス　気持ちに余裕のでるルートだが長い
４ピッチ目(5.10c/d、15m)・５ピッチ目5.8、30m　繋げて登った。4ピッチ目は短いが厳しい。
６ピッチ目5.6、35m　草付きバンドのトラバース。気が抜けない。
７ピッチ目5.9、30m　有名なハンドトラバース。もたもたしているとパンクする。
８ピッチ目5.9、25m　高度感のあるカンテルート。
９ピッチ目5.9、35m　高度感のあるカンテからハング。最後まで楽しませてくれる。

6ピッチ目　5.6、35m　草付きバンドのトラバース。気が抜けない。さてこのルート唯一のブッシュ帯。ブッシュで高度感が消されているが、決して歩きではない。クライミングのつもりで行かないと、プロテクションが少ないだけに踏み外すと落ち幅が大きいし大きく振られる。

　　　
４、５を繋ぎロープが足りないので最後に短いピッチを追加した

草付きトラバースの終了点

ここの草付きトラバースの終了点は、お隣のREAL CONSTANTEの終了点にもなっている。ここで撤退する場合は、REAL CONSTANTEを懸垂することになる。ビレイポイントはサマコレと同じように構築されていると思うが、確認したわけではない。なぜそう考えたかというと、空模様が怪しくなってきたからだ。天気予報だと夕方から雨になる可能性があったからだ。常に撤退を考えつつ、雨にならないことを祈った。

７ピッチ目　5.9、30m　有名なハンドトラバース。もたもたしているとパンクする。
さて、このピッチが有名なハンドトラバースらしい。トポを見るとフェイスを直上してからクラックをトラバースしカンテで切るようになっているが、下から見上げて全容を掴むのに少し戸惑った。トラバースのクラックを確認しルートが描けた。

　　　
ハンドトラバースピッチのビレイ点　　　　　全容

　　　
謝上バンドから垂直のフェイスを直上

　このピッチだが、ハンドトラバースまでにちょっとある。斜上バンドから垂直のフェイスを直上し、トラバースクラックに入る。フェイス直上はガバがあるので安心だが、調子に乗って腕に頼っているとハンドトラバースでパンクする。直上したところでレストし撮影態勢に入る。気持ちよくトラバースしたいと同じくらいいいショットを撮りたいという気持ちもあった。確かにリードは面白いが、厳しい所で臨場感あふれるショットを狙うのも戦場カメラマンみたいでやりがいを感じる。うさぎはトラバースに入ったところでロープがからみクライムダウンを強いられ、復帰後は腕がパンク状態で間一髪でフィーフィーが引っかかりレストした。もしフォールしたら大きく振られているところだった。
　話はそれるが、北海道の名付け親である松浦武四郎は、幕末の冒険家であり登山家でありルポライターでもある。彼の分骨碑がこの西大台にある。３度の大台が原探索でしっかりとしたレポートを残している私は彼の生き方に共感することが多く、核心部のワンショットに生き甲斐を感じた。
　佐藤貞夫さんがヤマケイ関西に記した「松浦武四郎と大台ヶ原」から引用すると、「明治十八年五月十八日、朝起きると霧がかかっていた。案内の者が山葵の葉、タラの芽を味噌汁や味噌煮に してくれた。なかなかの味である。西ノ滝の上には大岩が重なっている。木に綱を掛け滝を下る。一息ついたところでこれをスケッチ。中ノ滝、東ノ滝も訪ねてスケッチした。」と記されていて、武四郎が今から130年前にこの岩壁を見ているということだ。今風に解釈すると、「木にロープを掛け懸垂下降して写真を撮った」ということだ。

　ここはハンドはしっかりとしているがスタンスが甘い。下を覗き込むとスタンスと同時に高度感が目に飛び込んでくる。飲まれてはいけない。高度感にしびれたい方はゆっくりと渡ることをお勧めするが、腕がパンクするのが早いか、渡りきるのが早いかの競争になる。

本当にこんな感じです。落ちて振られることは想像したくない。

　　　
腕がパンク寸前にアームロックをかますうさぎ

　　　
実際にやってみると、こえーーーー！　スタンスどこなの？

8ピッチ目　5.9、25m　高度感のあるカンテルート。
もうここまできたらグレードなんて関係ない。カンテにハンガーが打たれているが垂直の右側のフェースが正解のようだ。ただし体が完全に空間に露出するので高度感は倍増する。２００m真下にシオカラ谷が見えている。これには痺れたね。グレードが５.９だから周りが見えているということだろう。ものすごい高度感だ。これまでにいろいろなルートを登ってきたが、これまでにこれだけの高度感はなかったと思う。

このピッチ、ルートどりによってグレードが変わるような気がする。まともにカンテを行くと甘くなり落ちそうになった。ボルトの位置をしっかりと見てルートを見定めたい。どうしても右の垂壁には回り込みたくはないんだけど、そちらの方が正解のような気がした。

　　　
左：以外と甘いところが多い　　右：ものすごい高度感、真下がシオカラ谷

　　　
お隣の岩壁にサンダーボルトがある。終盤のグレードはほぼ同じ

　　　
左：最後までしっかりと整備されている　　　　右：右側に回り込むと体が空中に出る

写真ではわからないが、体が空中に出ている。スタンスを探すとき下が見えてしまう。

９ピッチ目　5.9、35m　高度感のあるカンテからハング。最後まで楽しませてくれた。
さてラストピッチ。泣いても笑ってもこれが最後だ。グレードが5.9を知っているので、気持ちにゆとりがある。疲労困憊しているが、最後なのでしっかりとやりたい。ところが最後にハングが待っていた。うさぎの動きが止まった。どうしても乗り越せない。挙げ句の果てに後から押し上げろと言っている。ところがこちらも体制が悪く、そんなことをしたらダブルでフォールしそうだった。

シオカラ谷が真下に見えている。あそこからここまで５時間かかっている。もう少しだ。

　　　
左：最後のハングを渾身の力で乗り越すうさぎ　　　右：やりました！ガッツポーズ

　　　
左：やれやれ、この時の安堵感は他に変えがたい　　　右：なぜか終了点に看板が設置されている

終了点には１６時に到着。6時間の激闘を征しトップアウトできた。課題がいくつもあったがこれは次回へのモチベーションに繋がるだろう。肩からギアを下ろし靴を脱いで岩に腰を降ろすと、緊張感がほぐれ他に変えがたい安堵感に包まれていく。そして充実感がじわじわと湧き上がってくる。ルートガイドには４〜６時間となっているが、途中の待ち時間や３人パーティであることを加味すると標準的はタイムだったと思う。

帰路　緊張感がほぐれるとおかなが空いてきた。遅くなったが昼ご飯だ。登攀中は緊張感で何も受け付けない。少し休憩をとって千谷尾根を登り返していった。足がだるくて上がらない。それだけ消耗したということ。広がりのある尾根だが尾根芯を行けば自然に登山道に合流した。途中、今年は不作のシロヤシオがたくさん花をつけている木に出会えた。ギンリョウソウも咲いていた。

　　　
千石尾根　　　　　　　　　　　　　　ギンリョウソウ

　　　
シロヤシオ

　　　
登山道　　　　　　　　　　　　　駐車場

駐車場に戻ると閑散としていた。何はさておきとりあえずビールで祝杯をあげた。明日は雨になろうが気にしない。美味しいものを食べて美味しお酒を飲んでから休んだ。

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