2011年9月10日25日26日 北穂高岳東稜(北アルプス) ホーム |
■北穂東稜(北アルプス)2011年9月25日26日 No.626 隊長、うさぎ 北穂南陵へ 3時40分,スマートフォンのアラームで目を覚ます。しっかりと寝ることができ,目覚めは良かったが,暖かいシュラフが恋しい。しかし今日は,時間的にゆとりのない行程なので,シュラフのファスナーを下し行動開始。さっそく暖かい味噌汁を作り,野菜サラダ,ボイルウィンナーのメニューで朝食を摂って体を始動させた。予定通り4時30分,ザックに登攀具,ロープ,雨具,水,防寒具などを詰め込み,ヘッドランプの明かりを頼りに野営場を後にした。 分岐 ヘッドランプに照らし出された石段の登山道をゆっくりと登って行く。小屋の取水施設を過ぎ灌木帯を抜けると少し空が白み始めてきた。ヘッドランプを消して歩けるようになると,そろそろ分岐点に差し掛かってきた。鎖場への取り付きの手前からがれたずルンゼを横断しなければならない。踏み跡ははっきりしないが,棟稜へ取り付くルンゼは確認できる。取り付きまでのルートを目で追ってみると,自ずとルートが推測できた。 大小の岩屑でうまったガレ場は常に落石の危険がつきまとう。落石に備え耳をそばだて,浮き石に注意しながらルンゼを横断した。取り付きのルンゼに入ると傾斜が増し,足元が不安定になってきた。ルンゼをだましだまし進むがルートだが,少し岩尾根に逃げることにした。岩峰上部を見上げると堆積した巨岩がかぶさってきているので直登は無理だろう。 案の定,上部のせり出した岩に進路を阻まれた。2か所ほど弱点がありそうだが,上に乗っている岩が不安定そうだ。稜線はすぐそこだが,大事をとって断念することにした。ならば,トラバースするか,懸垂で逃げるしかない。結局一段下にさがり左からトラバースができた。しかしその時,ウサギがホールドのためにつかんだ人の大きさほどの岩が倒れてきた。うさぎは咄嗟に反転しハイマツにしがみつき事なきを得たが,思わぬところに核心が隠れていた。リッジは安定した岩だったが,少し芯を外れると浮き石が多かったので,注意するように声をかけながら登っていたが,人の大きさの岩がまさか動くとは思っていなかったようだ。バリエーションを行く場合,ルートファインドが極めて重要であることを改めて感じた。 コルへ 左へのトラバースは正解で,20mほど進むとコルに出た。やれやれだ。展望を楽しみながら息を整えて,これから進む岩稜のルートを目で確かめた。岩が積み重なり険悪そうに見える岩稜だが,実際に歩いてみると足場は意外としっかりとしていた。登攀が必要な所が何箇所かあることが却って,快適な登攀につながっている。バランスさえしっかりとしていれば確保の必要はないだろう。
レッジ しばらく進むと涸沢側のレッジの通過があった。しっかりとしたレッジでホールドも豊富で安心して通過できるが,下を覗き込むとかなりの高度感があった。これを過ぎ安定した岩場で撮影のために立ちどまった。南稜を見ていたウサギが,「あ!人が落ちていく」と声をあげた。慌てて南稜に目をやると,鎖場付近を滑落していくのが見えた。大変だ,今我々にできることはと考える。時計を見ると7時15分だった。我々はゴジラの背の手前まで来ているので現場には行けない。連絡するために携帯を取り出してみたが圏外だ。現場には何人かの登山者がいるようだ。とにかく我々は北穂高小屋まで行き,連絡をとることしかできないと判断。これから核心部を控えているので焦っても駄目なので,慎重に確実に前進することにした。
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