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■石ヤ塔(奈良県)
〜核心は昼間でもヘッデンつけて登るチムニー、初登かな?

レポート No.992
日時:2016年10月22日
参加者:
しんくん、隊長、うさぎ

林道駐車地(8:00)〜吊り橋(8:25)〜第1岩峰南面(9:20)〜北面取り付き〜1ピッチ目(9:20)〜塔の頭(13:20)〜懸垂〜取り付き(14:40)〜駐車場(16:10)〜石ヤ塔展望所(16:15)〜熊野JA〜鈴鹿

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Dirac sea このルート、「Dirac sea」というらしい。命名の意図は調べてないのでわからないが、Diracは物理学の学者だったはずだ。量子力学の方程式があったが、難解だったことを覚えている。そのディラクだろうか。今回は準備不足でルートの研究ができてなかった。しんくんが写真の調べてこれでまちがいないとこと。「えーー、これを登るの」と言いたくなるような取り付きだ。アプローチと取り付きを見て「週刊ヤマケイ」には載せられないと思った。しかしすべてを受け入れるのがアルパインなので、ロープをつなぐと戦闘モードにはいった。

   
1ピッチ目

1ピッチ目は、苔むした岩とブッシュから始まった。どうやら岩壁の基部に沿って斜上していくようだ。グレードはW20mとなっていた。

   
2ピッチ目

2ピッチ目の同じような状態で少しクライミングらしくなってきた。左の岩壁が本命だと思うが、Uピッチ目まではそれらしいところがなかったような。3ピッチ目もそのまま進む。クラックの凹角で、コケているので、なかなか手強かった。どうもすでにルートを外してしまったことになる。2ピッチ目の途中から左のクラックを上がるらしい。今回はリングボルト5本、ジャンピング、ハンマーを持っているのでどこからでも撤退できるので強気だ。この強気がルートミスにつながったようだ。

    
3ピッチ目          4ピッチ目のチムニー

3ピッチ目が終わると正面に暗いチムニーが立ちはだかった。他にルートはなさそうだ。どうも様子がおかしい。チムニーに入ると上の方に小さな窓が開いている。果たして抜けられるのか?しんくんが偵察に入る。右にクラックがありプロテクションはとれそうだ。チョックストンの上に上がると真っ暗でプロテクションが見えない。「ヘッデン準備」と指示が来た。昼間からヘッデンが必要はチムニーは初めてだ。

    

しんくんが蓑虫のように、じりじりともがきながら体を上げていく。途中で体がつっかえて、動けないようだが、様子が全くわからない。聞こえるのはしんくんの「うめきごえ」と「落石の音」。ただならぬ状況に胸がワクワク。うさぎは小柄なので狭いチムニーは得意のはずだが、最狭部で悪戦苦闘。取り付いてみると案の定、途中で動けなくなった。膝が上がらない。ヘッデンでスタンスを探し、足首の動きだけで数センチずつじわじわと上がるしかない。何じゃこりゃ!ピンチだ!Diracの方程式を解くような難しさ。出口の窓が小さく見えている。人ひとりがやっと通れる穴だ。勿論ザックはビレイループにぶら下げているが、腰のギアが引っかかって出られない。一つ一つギアを抜いてやっと出られた。「トポにはこんなピッチなかったぞ」とにかく抜けられたいのでよしとしよう。

    
暗黒のクラック

「暗黒クラック」を抜けると明るくなった。南面出でたようだ。岩がもたれかかった大きなクラックで、どうやらこのクラックが最終ピッチのようだ。ところがDirac seaの最終ピッチと様子が違う。どうもルートが違ってるようだ。登れそうなクラックだが、プロテクションがとらそうにない。本来なら残置があるはずだが。左のフェイスはプロテクションがとれそうなのでとりあえず、上に抜けることにした。ところが上に抜けてみると。

    
最終ピッチ                 第1岩峰

しんくんが登って「あれちがう」「隣が第1岩峰だ」。とにかくこのままでは帰れないので全員が登る。とにかく岩峰の頭に出たが、第1岩峰へは移れそうになかったので、ここを今日の終了点にした。ひょっとして今日のルート、初登だったのかもしれない。とにかくあの「暗黒クラック」を良く登れたものだ。もう登りたくないが、「もだえ苦しみたい方はどうぞ」。


第1岩峰

第1岩峰の隣の頭 しかし展望のいいところだ。岩峰群の中でしか見られない風景に、登攀の苦労が報われた。赤松とコウヤマキが岩の割れ目に根を生やしている。しっかりとした懸垂支点になりそうだ。ここで昼食。昼食に持ってきたいなり寿司。当初の目的だったDirac seaはトレースできなかったが、全5ピッチ、全く残置物もなく、登攀の痕跡のすらないルートが登れたことに満足できた。

 

   
お隣の岩峰              コウヤマキ


頭で

   
最終ピッチのクラック     しっかりとした赤松捨て懸垂用のロープセット

懸垂は50mの垂直懸垂を1回と、40mのルンゼの懸垂1回で取り付きに戻った。岩峰の頭で降り出した雨はやみそうにない。ガレたルンゼを慎重に下る。吊り橋を渡り、モノレールに沿って登り返す。足腰が疲労していて、雨の中の都合200mの登り返しが堪は堪えた。帰りに熊野に降りてミカンをゲット。やはり熊野のミカンは安くておいしい。カキとミカンとハチミツをたくさん買い込んで帰路についた。

   
垂直懸垂             岩壁に生えるセッコク

   
展望所から見る石ヤ塔


林道の展望所から見る雨に煙る石ヤ塔


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