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槍ヶ岳(北アルプス)2009年9月11日12日 No.506 隊長
〜槍のてっぺんでパノラマ〜
9月11日 コース
新穂高温泉無料駐車場(5:31)〜穂高平小屋(6:43)〜白出沢出合(7:20)〜滝谷藤木レリーフ(8:43)〜
(9:32)槍平小屋(9:44)〜千丈乗越分岐(11:31)〜(12:03)千丈乗越(12:21)〜槍平小屋(13:35) 
9月12日
槍平小屋(5:00)〜飛騨乗越(5:13)〜千丈乗越分岐(6:05)〜(7:30)槍平小屋(7:40)〜藤木レリーフ(8:14)〜(9:22)白沢沢出合(9:30)〜穂高平小屋(10:00)〜新穂高温泉無料駐車場(11:05)

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千丈乗越 千丈乗越に登りつくと一気に展望が開けた。乗越に立つのは今回が二度目だ。前回が双六から西尾根を歩きここにまでやってきた。時間の関係で山頂は踏まずにここから下った時のことを思い出す。乗越から見上げる槍も迫力がある。足下は天井沢で、そこから美しい二次曲線を描きながら山頂へとつながっている。ぎざぎざの北鎌尾根も恐竜の背中のようで荒々しい。槍の歴史をひもとくと、開山は文政11年(1828年)に播隆上人によるものとされている。新田次郎の小説「槍ヶ岳開山」に詳しい。また、加藤文太郎はどのあたりから天井沢まで降りていったのだろうか、あれから100年の歳月が流れていることになるが。自然の尺度から見ると人の営みなどほんのわずかな瞬間なのかもしれない。槍はこれからもずっと槍であり続けるだろう。


千丈乗越から見上げる槍ヶ岳


天井沢からせり上がってくる槍ヶ岳


双六岳へと続く西鎌尾根


千丈乗越から見る黒部源流の山々 中央左:双六 中央右:三俣蓮華


見上げると槍ヶ岳山荘はすぐそこに見えているが


赤茶色の硫黄尾根

槍の肩 さて、今日の目的地の槍ヶ岳山荘は手の届くところにある。ガイド地図では所要時間2時間になっている。標高差は400mあるので、1時間30分が妥当なところだが、ガイド地図はゆとりを持った時間設定だ。この時点で標高は2700mを越えているので、低山の400mとは大きな違いがある。それに歩き始めてすでに、6時間が経過しており疲労も蓄積してきている。これからの行程が最も苦しくなるので、アミノ酸サプリメントで筋肉の疲れを取った。低酸素にあえぎながら登り、13時30分に槍の肩に到着した。晴れているうちに山頂を往復しようとも思ったが、すぐに天気が崩れることもなさそうなので先ずは、テント設営を優先させた。というのは明日は天気が崩れるので、なるべく風を避けることができる場所に設営したかったからだ。まだ時間は早いし、平日だが、すでにいい場所には何張かのテントが設営されていた。混み合う日には場所指定のようだが、この日はフリーだった。水とトイレのの説明を聞いて設営料金500円を支払う。


肩の手前から見上げる槍ヶ岳


テント設営


槍岳山荘と槍ヶ岳


槍岳山荘

槍の穂先 ガスで時折、槍の穂先が隠れるものの、気象的には大変いいコンディションとなった。見え隠れしているうちがチャンスなのでまずは山頂へ上がることにした。30分ほどの行程だが、混雑もなく気持ちよく槍の穂先へ登ることができた。垂直に近いハシゴが何カ所かあるが、穂高や剱の岩場に比べるとあっけないものだ。狭い山頂だが人が少なかったので、ガスの晴れ間を待って展望を楽しんだ。韓国からやってきたらしい男女が仲良く話をしていたのが印象的だった。山頂からの展望の説明は、写真とキャプションに任せることにする。


大槍ヒュッテ(左)と殺生ヒュッテ(右)


ハシゴ場が続く


最後のハシゴこの上が山頂だ

 
山頂三角点と小さな祠


間の沢を覗き込む

 
北鎌尾根と独標


向こう側は大天井から常念への稜線


東鎌尾根と大槍ヒュッテと殺生ヒュッテ


山頂からハシゴ場をのぞき込む


槍ヶ岳山荘を俯瞰する。小屋もテント場も平地を有効利用している。

山頂から戻り、山荘でビールと水2リットルを購入する。先ほどはフリースを着込んで山頂を往復したが、体を動かさなくなると寒くなってきたので、もう一枚ダウンを羽織った。絶景を見ながらビールを飲みむ。「至福の時」とはこのときのための言葉だろう。リラックスしたので横になるなり1時間ほど寝込んでしまったようだ。ヘリの騒々しい音で目が覚める。大喰岳が邪魔をしてヘリは見えないが、穂高の上空をヘリが飛び交っているようだ。物資輸送や取材ヘリなら1機だし、夕方に物資輸送はないだろう。ラジオを付けるとジャンダルムでヘリの事故があったことがわかった。この騒動は18時まで続き、それ以後は日没とともに静かになった。


槍ヶ岳のキャンプ場


夕暮れ時の西鎌尾根

 寒くなってきたので暖かいラーメンを作り夕食とした。明日は確実に雨になるが、いつ頃から降り出すのだろうか。お隣の縦走中のお兄さんは明日、テントで停滞するのだろうかなどを考えながらシュラフに潜り込んだ。3シーズン用のシュラフでは少し寒さを感じる季節になってきた。ビールを飲んでから1時間ほど眠ったのですぐには眠くならず、ラジオを聞きながら過ごす。ヘリの事故のニュースが何度も入ってきた。

下山 風でテントがばたつく音で何度も目が覚めた。断続的にプチプチと雨粒がテントを打ち始めた。3時を過ぎに雨が降り出したようだ。曇天程度なら南岳経由で下山するという淡い期待は脆くも消え去った。こんな時は即刻下山すべし。4時前から食事をはじめ、4時半にはテント内でできるパッキングをし終えた。あとは雨のやんだ間隙を見計らってテントをたたむのみ。4時50分に撤収しパッキング完了。ガスで視界は数メートル。へッデンを点けてやっと足下が見える程度だ。晴れた日中は派手な目印は目障りだが、こんな時は大変ありがたい。目印がないととても歩けない。


雨の中の下山

 千丈乗越まで降りたところから本降りとなってきた。クマよけの鈴を大きく鳴らしながら一人でとぼとぼと降っていった。意気揚々と登った昨日とは対照的で、まるで敗戦投手のようだが、心の中は充実感で満ちていた。こんな日だから登る来る人はいないだろうと思いきや、槍平ら小屋を朝、出発した人たちが登ってきた。明日の好天を期待しての行動だろう。下山するまでに約30人ほどの登山者と行き交った。槍平小屋まで降り、暖かいうどんかラーメンを食べたいなと思ったが、早朝のために準備できないようだ。カッパを脱いで小屋でくつろぐのも面倒なので小休止後小屋を後にした。白出沢を渡ると林道歩きになる。山頂から4時間半歩き続けているので、これからの1時間半は単調で大変長く感じられた。

取材 新穂高温泉まで来ると、TVの取材につかまり、いきなりカメラとマイクを向けられ、山の様子はどうでしたか?何か音は聞きましたか?私は槍にいたので、9キロも先の穂高のことはわかりませんが、たくさんヘリが飛んでましたよ。これはNHK。ヘリは見ましたか?音は聞きましたか?槍のテント場からは間に山があるので見えませんし、ガスも出ていました。これはどこかの民放。職務で事故に遭われた方々のご冥福をお祈りいたします。

 新穂高温泉無料駐車場には11時に帰着した。土曜日の雨なので道路は空いていて順調に走り4時間で帰宅できた。夏場のアルプス通いも残すところあと1回程度だ。あと3週間もすれば雪が降り始めるだろう。完

ガイド地図のコースタイムは登り10時間、下り7時間20分となっている。それで今回は、18キロ装備で、登り8時間、下り6時間だった。これは休憩、撮影時間込みの時間だ。装備が日帰りなら20パーセント時間短縮できるので、12時間の往復が可能となる。次回挑戦することにしたい。
笠ヶ岳が累積標高差+-2100m、22km
双六岳が累積標高差+-2000m、28km
槍ヶ岳が累積標高差+-2200m、30km
*いずれも新穂高からのピストン

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