二回目の谷川岳は烏帽子岩奥壁の凹状岩壁。人気があるのは南稜や中央稜だそうだが、週末のこの時期は混み合う。大物打者を前にして、あえて1球目は変化球から入った。当初は二日間を予定してメジャールートを2本登る予定だったが、突然の予定変更で1本に凝縮することになった。結果として最高の天候に恵まれ一の倉沢のデビュー戦を飾ることができた。


一の倉沢出合 雪渓は出合の少し上流まで伸びて来ていて、右岸のルートではさっそく、シラネアオイやサンカヨウが出迎えてくれた。サンカヨウはヤマでは一般的に見られるが花だが、シラネアオイはアルプスでは珍しい。5分ほど左岸を歩くといよいよ雪渓に入る。登りなのでアイゼンなしのアプローチシューズでも大丈夫だ。後でわかったことだが、テールリッジはフリクションのいいアプローチシューズでないと厳しそうだ。もちろんフラットシューズに履き替えればいいわけだが。



テールリッジ末端には約40分で到着した。日本アルプスなら取り付き点まで行くのに1日を要するが、谷川岳はアプローチに恵まれている。雪渓のつながっているこの時期限定の特典らしい。末端でこれから先は必要としない、ストックやアイゼンなどを少しでも荷を軽くするためにデポした。シュルンドはそれほど開いていなかったので、簡単に岩場に乗り移ることができた。末端の取り付きはⅢ級程度の岩場だが、登りなので確保なしで登った。

奥壁取付へ 奧壁には、南陵フランケ、変形チムニー、中央カンテ、凹状岩壁の各ルートがあるようだが、大多数のパーティーは人気ルートの南陵に終結していた。同じ時間に到着した地元2人パーティーは中央カンテか変形チムニーをやるようで、先週は我々が今から登る凹状岩壁だったようだ。岩が脆くて落石が多いとのこと。先週は落石にあたり眉毛の上を怪我したそうだ。 凹状岩壁ルートは先行パーティがいるかどうかわからないが、待ちはなかった。パーティーは私とタクさん、うさぎの3人で1パーティで私がリード。もうひとつはjames、本間さん、とっちゃんでの3人パーティーでjamesリードということになり、私たちが先行することになった。

1ピッチ目 Ⅲ+ 40m チャレンジアルパインでは、「一段上がってハング下のバンドを右トラバースして回り込み、凹状の岩場に入って左上する。」凹状岩壁取り付きは中央稜取り付きから少し入ったところにある。凹状岩壁ルートは取り付きから2ピッチまでは共用している。したがって取り付きは同じだ。先着の2人パーティーは少し先の変形チムニーから入るようだ。7時30分登攀開始。バンドを右に移動してから草付きの岩溝を上がって行くとペツルのハンガーが見えてきた。ここでピッチを切った。



5ピッチ目 Ⅳ チャレンジアルパインでは、「35m やや脆い岩場を右上し、垂壁のクラックをトラバース気味に越え、草付きテラスへ。このピッチはビレイポイントから間違えて直上し行き詰まるパーティあり。要注意。」先行パーティーのセカンドを追いかけるようにスタートした。ガイド本の通り「右のカンテを越えて,さらに右上のハングを切れ目から越える」。






8ピッチ目 Ⅳ+ チャレンジアルパインでは、「50m 垂壁のクラックは外側にホールドを取り、スタンスはクラックと壁側を使い分ける。ランナーは十分ある。クラックを抜けると傾斜は落ちる。」さて最後のピッチの核心は被り気味のフレーク状のクラック。支点がしっかりとしていたので安心してリードできた。ロープをいっぱいに伸ばして登攀終了点に到着した。時計を見ると11時30分で登攀時間は4時間だった。


中央稜を懸垂下降 ~登攀と同じ、2パーティーに別れ最初は25m懸垂を4回繰り返す~
さて懸垂はタクさんの経験値から短いのを回数こなした方が効率がいいということで,2パテーィーに分かれて,25m懸垂を4回,50m懸垂を3回で中央稜取り付きに到着した。




土合に戻ると18時前になっていた。さて今からが大変な距離を一人で走りきらなければ。その前に皆で赤城のSAに寄って夕食を取った。520キロを走り鈴鹿には1時30分に到着した。家を出てから家に帰るまでが登山と心得ている。従って運転で事故があってはつまらない。気を抜けるのは家に無事にたどり着いてからだ。翌日の勤務に備えお風呂にはいって布団に潜り込んだ。