幽の沢は「チャレンジ!アルパインクライミング」によると、「幽の沢は中級者向きのルートが多いが、V字状岩壁右ルートはやや草付は多いものの、快適なフェースクライミングが楽しめ、初心者を含むパーティーに人気が高い」と紹介されている。今回はタックンのお誘いで、谷川岳デビューとなった。谷川岳は、北アルプスの剣岳、穂高岳と肩を並べる日本三大岩壁だ。前

者二つを比べると標高は低いが、岩場部分は300~400mのスケールを持っている。岩壁までのアプローチは、一の倉沢、幽の沢だが、残雪期なら比較的短時間で岩壁に取り付けるが、今回の幽の沢は、濡れた岩に手こずり、入渓から取り付きまでに3時間30分を要した。しかし、本悪的なクライミングが楽しめる魅力的な山であることに変わりはない。人気が高いということは登山者も多いということで、それに比例して滑落、落石、雪崩による事故が多い山域で、かつては魔の山とも呼ばれ、これまでに700名以上の登山者やクライマーが命を落としている。谷川についての概略を記したが、いつかはやってみたい山であったが、自宅のある鈴鹿から登山口の群馬県土合までは500km以上あり、片道8時間かかることもあり、二の足を踏んでいた。今回、タックンのお誘いがあり、谷川岳のクライミングが実現することになった。

幽の沢 到着すると、男性2人パーティーが出発するところだった。我々も小休止を兼ね、ハーネスを装着しヘルメットをかぶり入渓の準備をした。右に左に岩を拾いながら歩き始めた。昨夜の雨で岩が濡れていて良く滑り、油断する足を取られた。出合からしばらくは樹林が視界を遮り見通しが悪いが、進むにつれてナメが多くなり開けてくる。水量はそれほど多くはないが、水のしみ出しが岩を濡らし、通過できないナメに行く手を阻まれた。タックンによると、岩が乾いていれば、ポケットに手を突っ込んでいても普通に歩けるところだそうだが、岩が濡れてしまうと難儀するところだそうだ。今回は右岸の草付を大きく巻き、立木にビレイをとって、懸垂で谷に下った。6人いるので結構なロスタイムが発生した。全員が無事に通過でき安堵。

カールボーデン 最後の難所を通過すると谷は枯れ、広大なカールボーデンのスラブが見えてきた。フリクションの効く岩を拾いながら谷を詰め、気がつくとスラブ帯に入っていた。正面が中央壁、左が中尾根、右が石楠花尾根で、その間の右俣リンネがV字を刻んでいる。今日目指すのは、V字岩壁の右ルートだ。このルート(V字状岩壁右ルート)は「チャレンジ!アルパインクライミング」のガイドによると、「幽の沢入門のフェースクライミング」という小見出しがついている。

6ピッチ目(Ⅲ+~Ⅳ 40m) 出だしからすぐに左ルートと分かれるようだが、どこだかわからなかった。タックンの指示通りにリードする。急なフェースⅢ+~Ⅳ40mを上りピッチを切る。落石を1個してしまった。支点が多く、ロープが出ているので、引き上げが重い。このあがりでお腹の調子が悪くなるがトイレするところがない。女性陣もトイレに行きたいというが、ハーネス外す場所もなく、そんなこと無理。しかしこのピッチ、高度感もあり実に快適だった。中央壁を登っているパーティーがハーケンを打つ音が谷に響いていた。

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10ピッチ目(Ⅳ 30m) フェースからちょっとやらしいルンゼ。グレードⅣ。ステミングで登る。30m濡れていて滑りやすい。この辺りまで来ると、今何ピッチ目かもわからなくなってきたが、頭上が開けてきているので終了点は近いようだ。

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堅炭尾根は色づき始めており、展望もよい。ただし、溝状の登山道は岩がむき出しになっていて、しかもよく滑る。そのような状況での急降下なの思った以上に消耗した。途中、中央稜線を登った2人の2パーティーが追い越していった。2時間近い激下りでやっと、芝倉沢出合に到着。もうそこまで闇が迫っていた。

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林道までもう少しだが、ヘッデンを頼りに谷左岸を巻きながら下るのも難儀だった。途中、徒渉点でルートを見失い、右往左往。対岸に渡り登山道に復帰し、しばらく下るとやっと林道に出た。立派な道標を見て安堵した。てくてくと林道を2時間歩き、谷川岳ロープウェイ駐車場に到着した。

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ガイド本「チャレンジ!アルパインクライミング」の幽の沢の小見出しに、「明るく静かな岩場でフリークライミングの楽しさ、醍醐味を味わう」と書かれていたが、まさしくその通りのルートだった。

ロープウェイの駐車場には20時30分に到着した。さてここからが大変だ。鈴鹿の自宅まで515kmある。明日の勤務に間に合うように帰りたいがどうなるかわからない。 結局、休憩を入れ8時間で到着した。時計を見ると4時半だった。お風呂に入り2時間ほど寝てから7時半に出勤した。

http://photocb.sakura.ne.jp/html/2012/2012_10_08yuunosawa/2012_10_08.htm

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