2015年7月31日8月1日2日
日本マルチピッチによると正式名称は「甲斐駒ケ岳赤石沢奧壁ダイアモンドAフランケ」である。ダイヤモンド形の300mの花崗岩の大岩壁。数年前にNHKの番組で、「あこがれの大岩壁へ~限界に挑んだ75歳~」。 満身創痍の河西公子さんがチャレンジしたルートだ。NHKの取材の日が偶然にもたくさんたちの登攀日と同じだったそうで、当時の取材班の行程がわかった。このルートは上半分を登ることもが多いそうで、NHKの取材もそうだったらしい。
満身創痍といえばうさぎもそうで、この番組を見たときからチャレンジが始まった。目標は、全ピッチを完登すること。フェイス、カンテ、スラブ、ジェードル、クラック、オーバーハングとクライミングのすべての要素が含まれている。我々は初見だが、たくさんは4度目の挑戦で、このルートは3回目だ。我々にとってはアルパインクライミングの集大成として臨んだ。


岩屋 5時過ぎにやっと岩小屋に到着した。もう少し大きいのかと思っていたが、意外と小さくて天井が低い。うっかり立ち上がると頭を打ちつけてしまう。要するに屋根のあるビバークができる場所で、問題なのは水場がないこと。

アプロート ちょっと朝寝坊して主発が5時15分になった。我々の実力からすると日没までのぎりぎりの時間であったことが後でわかった。岩小屋から踏み跡を頼りに下降していく。ダイヤモンドの頭の岩小屋(赤蜘蛛ルートの終了点)まで下り、その手前で七丈沢に沿って下っていく。この間にも岩場がいくつかありフィックスロープが張られている。泊まれそうな岩屋もあった。

ギア類だが、ヌンチャク20本+カムは#3まで1セット+中間カムを1セット+ナッツ+アブミ+スリング類7本+捨てロープ6m+ザック(水1リットル、カメラ、雨具、行動食、靴はたくさんいもってもらった)。ギアを身につけザックを担ぐとずっしりと重い。これで2本のロープを引っ張る。重労働だ。身体は重いが気持はすでに戦闘モードになっていて軽く、先ほどまで感じていた心配や不安消え去った。よしいくぞ。300mの垂直の岩壁に挑む。


2ピッチ目 「40mⅤ コーナークラック」(ビレイ8:50)ジェードルのフリークライミング。出だしは、左のフェイスのフレイクでスタート .快適に離陸できる。すると長大なジェードルが見えてくる。フィンガーからハンドサイズのクラックが伸びていてフリーで登れるが、フットジャムの足が痛くてたまらないし、長いのでレストを入れないと息が切れた。テーピングもジャミンググローブもしなかったので手が痛かった。「グローブをはめて」とフォローに指示した。途中のわずかなギャップでピッチを切る。

5ピッチ目 「40mⅤ 被った凹角からテラスを経て、凹角からカンテ状」(ビレイ12:05) 凹角から始まるがブッシュで隠れている。出だしはうっとうしいがすぐにカンテを越えてフェイスを移ると正面に核心部のフェイスが見えてきた。支点は2本のリングボルトにハンガーが一個、打ち足されていた。重要なピッチが始まるからだろうか。


6ピッチ目 「40mA1ボルトラダー」(ビレイ13:50) さて核心ピッチが始まる。フェイスのボルトラダーからフィンガーサイズのクラックに沿っての人工登攀。このクラックの右にはスーパークラックが走りフリーで5.11cらしい。平山ユージさんが2003年にオンサイトしたとか。われわれはもちろん人工。


7ピッチ目 「40mⅣA1カンテを右に越えボルトラダー」(ビレイ15:20) 7ピッチ目も核心が続く。フェイスをボルトダラーで登り、恐竜カンテを右に回り込む。ボルトの欠損はなかったが、タイオスで凌いでいるところがあった。終了点は安定したテラスで、先ほどのハンギングと比べると天国のようなテラスだった。ここまでくると終わりに近づいた雰囲気がある。

8ピッチ目 「50mⅣA1岩の段のスラブ状フェイスからブッシュ」(ビレイ16:30) 岩場とブッシュが混在するピッチ。岩場はフリーでは侮れない。フリーで登り始めたが、力がなくなってきているので、途中で人工に切り替えた。適当なところの立木でビレイをとった。時計を見るとすでに16時30分を過ぎていた。

10ピッチ目 「ブッシュ帯を登攀しダイヤモンドフランケの頭の岩小屋へ40m」(ビレイ17:35) 今どこにいるのかわからないが、ここしかないだろうと思われるルートで登って行くと岩屋にぶつかった。登攀終了。時計を見ると18時になろうとしていた。

下山 8合目岩小屋 昨日要理は早く目が覚めた。さて広場まで日の出を見に行こう。すでに東の空が赤らみ始めている。七丈小屋の登山者も登ってきている。満月が奥壁の上に出ていて、岩壁が赤らみ始めた。八ヶ岳や北アルプスが雲海に浮かんでいる。登山者にしか見ることができない風景だ。その後岩屋に戻り軽く朝食をとり出発準備をした。

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