2007年7月1日 北岳(南アルプス) |
■北岳(南アルプス)2007年6月30日、7月1日 No.414 隊長、うさぎ 湖畔で草をついばんでいた猿の一団が、われわれに終われるように、草地の斜面を登り始めていた。一定の距離をおいているので、問題はないだろうと思っていたが、餌場への侵入者に対して、落石で対抗してきた。こちらはそんなつもりはさらさらないが、一度敵対関係が成立すると、それがそのまま継続するようだ。さかんに石を落としてくるので、危なくて気が抜けない状態になった。花の撮影もままならず、常に猿の動向を見てないと危険な状態だ。落石がくるとコースを見極めてからすばやく交さないといけない。雪渓を転がってくる石は無音なのでなおさら危険だ。先頭がわれわれで、その下100mほどに後続の登山者がいる。落石がある度に、下に向かって「らくー」と叫ばなければならない。30分ほどこの攻防に根負け気味になった頃に落石が、よけそこなったうさぎの足にあたる。身構えて力が入っていたので、打撲程度で大事には至らなかったが、危険な猿軍団である。 このままでは事態が改善しないので、後続の登山者を待ち、多勢で対処することにする。しかし多勢になっても落石は続くが、落石を早く発見できるので多少なりとも事態は改善された。この状態は草すべりの途中まで1時間少し続いたが、いつの間にか軍団は離れていった。 猿が居なくなり少し気が抜けたのか、疲れが出てきた。稜線まではもう少しだが、まずは右俣コースとの合流地点を目指して苦しいのぼりに耐える。ダケカンバの樹高が低くなると、ハイマツ帯に入った。草地では、開花にはまだ早いが、ハクサンイチゲやシナノキンバイなどが葉を出している。もう少し季節が進むと一面が花畑になるだろう。二俣コースとの合流地点からはまだ、ひと登りしなければならない。こなたりからは、さぞかし好展望だろうが、あいにくのガスで何も見えない。少し進むと雪渓の手前で、東南アジア系の外国人のグループが停滞している。どうもこの雪渓のトラバースを躊躇しているようだ。足元を見ると無理もない。ズック靴のようなものでは、雪面をステップでしっかりとらえられないだろう。 二俣分岐からはまた、ひとがんばり必要だ。たかが標高差は100mだが、ここまで来ると徐々に足が上がらなくなってきている。スピードダウンしこれを凌いで、2850mの稜線に乗る。ガスで展望はないので、稜線に上がったという実感がない。肩の小屋の野営場までは、ここから30分の距離。キバナシャクナゲガ見頃を迎えている。普通なら足元の花を愛でながら、展望を楽しみながらの稜線歩きになるが、相変わらずガスが晴れる気配がない。こうなれば早くテント場に行ってゆっくりとしたいところだが、疲労がピークに達して思うように進めない。 テント場のある肩の小屋から山頂までは40分の距離だ。険しさもなく緩やかなコースで、ガスがなければ胸のすく展望が眼前に広がるところだ。登山の醍醐味は山頂付近にあるが、残念ながら人生と同じで、思惑通りにはいかないことが多い。体が温まった頃に山頂に到着した。まずは真新しい三等三角点が目にとまった。レリーフにこの三角点のいきさつがかかれている。標高は3193m、日本では富士山に次ぐ第2の高峰だ。展望はなくても三角点に触れただけで感慨深いものがあった。 さて次の楽しみはキダダケソウだ。日本で唯一、この山の南側にしか咲かない花だ。ハクサンイチゲの同じ所に咲いているが、葉と花の形を見れば、その違いは一目瞭然だ。山頂から15分ほど下りたところが、吊り尾根への分岐点になっている。最初に見られるのはその付近だ。昨日、北沢峠から同じルートをたどってきたご夫婦が、一足早くは花見を終えて引き返すところだった。登山者のざわめきで、どこに咲いているのはか直ぐにわかる。この分岐から東の八本歯のコルへ下りていく登山道にも所々に咲いているのが確認できた。15分ほどで北岳山荘への近道分岐がある。これを2分ほど進んだ所に大群落があった。花の時期は遅くもなく早くもない。どんぴしゃり。雨ニモ負ケズ、風ニモマケズ、ここまでキタダケのことはあった。これで青空と展望があれば、写真の構図をほしいままにできたのにと悔やむが、しっとりとしたキダダケソウも、もちろん晴天の日には見られない。これでよし。
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